トレーニングの途中で急に疲れてしまった、もう動けないなんて経験はありませんか?思った通りのトレーニングができずにヘトヘト。これもしかしたら、エネルギーが足りてないのかもしれません。エネルギーという言葉はありきたりですが、実際具体的に説明できる人は少ないと思います。
実はこのエネルギー、トレーニングにとって必要不可欠なものなんです。なければ間違いなくトレーニングはできません。
本記事では、運動中に使われるエネルギーの説明、運動中のエネルギー補給の重要性、エネルギー補給方法の具体例について各々説明していきます。
本記事のトピック
運動中に必要なエネルギーは主に脂質と糖質である
運動するときには、エネルギーを得るために炭水化物(糖質)と脂質が必要です。軽いジョギングなどの負荷の軽い運動や安静時では、体内の脂肪酸や筋肉に蓄えられた中性脂肪が主なエネルギー源となります。
筋トレやランニングなどの中程度以上の負荷の運動では、筋肉内の糖(筋グリコーゲン)がより多く使われます。つまり運動の内容によって、主に使われる栄養素が異なるということが言えます。
激しい運動でエネルギー切れになるとタンパク質を消費する
運動中にエネルギーが不足すると、体がうまく動かなくなったり、集中力が続かなくなったりすることがあります。激しい運動では、糖質からエネルギーを生み出しますが、筋肉が必要とする酸素供給が追いつかず、乳酸という疲労物質が急激に上がることもあります。また、これが進むと筋肉のタンパク質を分解して、エネルギーを生み出さなければいけなくなります。
そして疲労と回復のバランスが崩れると、疲れが溜まったままの状態になります。これをオーバーワークといいます。回復が遅れるだけではなく、ケガの原因や、筋肉が大幅に分解してしまうこともあるので特に注意が必要です。
運動中にはたくさんのエネルギーが必要
運動中にはたくさんのエネルギーが必要です。前述の通り、主なエネルギー源となるのは糖質と脂質です。軽度の運動では中性脂肪や、脂肪酸などの脂質、中程度以上の運動では、筋肉内の糖である筋グリコーゲンの利用が増えます。
糖質は筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄えられますが、人によって蓄える量は異なります。アスリートでもおよそ2,000kcalしか蓄えられないため、長時間のマラソンなどをする場合には、糖質だけを頼りにすると途中でエネルギーが不足し、続けることが難しくなる可能性があります。
なので身体は脂質をエネルギーとして活用することで、運動を続けることができます。通常マラソンのような中程度以上の運動では糖質が主に使用されるのですが、トレーニングを続けることで、筋肉中のミトコンドリアが増えます。それが脂質の利用能力を高めてくれるのでエネルギー切れしにくい身体となるわけです。[i]
エネルギー補給の具体例
糖質は吸収の早いマルトデキストリンなどがオススメ
トレーニング後は、グリコーゲンの回復が重要です。特に持久系トレーニングでは、グリコーゲンが多く消費されますので、吸収の早い糖質を摂取しましょう。パンやおにぎり、麺類、バナナ、干し芋、甘酒などがおすすめです。
サプリとして、マルトデキストリンをとるのもオススメです。マルトデキストリンはデンプンを分解したもので、ブドウ糖をつなげた構造を持っています。ブドウ糖は吸収が早いですが、血糖値が急激に上がってしまうというデメリットがあります。それをつなげることによって、緩やかにエネルギーに変換されるようにしたのがマルトデキストリンという訳です。
摂取タイミングは運動前(2時間ほど)、運動中、運動後それぞれオススメです。運動前はエネルギー補給として、運動中はエネルギー源と筋肉の分解抑制効果、そして運動後はプロテインと一緒に摂取することで筋肥大の促進効果もあります。
ただし過剰摂取は禁物。肥満や、糖尿病の原因となるので注意が必要です。具体的な摂取量については以下、【エネルギー補給時の注意点について】で解説しています。
脂質は質が重要
脂質は女性ホルモンの元になったり、細胞の一部を構成したり、EPAなどの不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減少させたり、身体にとって必要不可欠なものです。
脂質は糖質と比べてエネルギー多くのエネルギーを産出します。ある研究では一般成人男性において、脂質はグリコーゲンの30倍以上のエネルギーを持つと言われています。[ii]ただしそれに伴いカロリーも高いので注意が必要です。例えば糖質1gあたりのカロリーは4㎉のところ、脂質では9㎉なので摂取量を誤ると肥満の原因となります。
これらのことから、糖質のように身体から枯渇することはほとんどありませんが、脂質を摂取する場合は脂質の質と量について意識することが重要になります。注意点は以下【エネルギー補給時の注意点について】で解説します。
おススメの脂質
- オレイン酸:オリーブ油に含まれる、悪玉コレステロールを下げる
- DHAやEPA:青魚に含まれる、悪玉コレステロールを下げる
- 中鎖脂肪酸:ココナッツオイルなどに含まれる、脂肪になりにくい
補助的にタンパク質やアミノ酸の摂取も重要である
主なエネルギー源ではありませんが、タンパク質やアミノ酸の摂取も重要です。特にハードトレーニングにより糖質が枯渇した場合は、タンパク質を分解してアミノ酸からエネルギーを生み出さなければいけない状態になります。そのため、カタボリックを最小減に抑えるためにもタンパク質やアミノ酸の摂取も非常に重要ということです。
エネルギー補給時の注意点について
運動時にはエネルギーが必須ということが分かりましたが、何点か注意点もあります。やみくもにエネルギーを摂ることは、逆にデメリットになることがあるので、以下でそれぞれ注意点を解説していきます。
糖質の適切な摂取量
糖質はエネルギー源として重要ですが、摂りすぎは血糖値の急激な上昇を引き起こし、体重増加や糖尿病のリスクを高める可能性があります。炭水化物の適切な種類と量を選ぶことが大切です。穀物、野菜、果物などの自然な形での糖質摂取を心掛けましょう。
糖質の必要量は、個人の活動量により大きくことなるので明確な設定はありませんが、ある研究では筋トレなどの短期的な高強度運動の場合は6g×体重(kg)、マラソンなどの持続した中強度の運動を行う場合は7~10g×体重(kg)とするデータもあります。[iii]
脂質の種類と量に注意
必要な脂質を摂ることも重要ですが、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量は制限する必要があります。これらは心臓病や動脈硬化のリスクを高める可能性があります。代わりに、オメガ-3脂肪酸を含む魚や植物性脂肪を適度に摂ることが推奨されます。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2020年版)』によると、食事のカロリーに対する脂質のエネルギー比は20〜30%にすることが望ましいとしています。これを参考にすると、ざっくりした値ですが、1日の脂質目標量は男性で約60〜90g、女性で約45〜65g程度となります。
食事のバランスと多様性
単一の栄養素に偏らず、バランスのとれた食事を心掛けましょう。タンパク質、ビタミン、ミネラルを含む多様な食品を摂ることが重要です。エネルギーを効率的に利用するためにはこれらの成分が必要となるからです。また食事の多様性は栄養バランスを保ち、健康的な体重管理をサポートします。
まとめ
今回は以下のことが分かりました。
- 糖質と脂質が主なエネルギー源である
- 運動の内容によって消費されるエネルギーの割合が変わる
- 糖質が枯渇すると脂質やタンパク質が利用されることがある
- トレーニングにより脂質を効率的にエネルギーとして活用できるようになる
- エネルギー摂取に関してはいくつか注意点がある
トレーニングするにあたってエネルギー摂取は必要不可欠ということが分かりました。
例えば筋トレをする人にとってタンパク質が大切なのは当然なのですが、実は糖質もエネルギー源として必須です。適切なエネルギー摂取を心がけて、トレーニングをより良いものにしていきましょう!
[ii] Romijn JA, Am J Physiol. 1993 Sep;265 (3 Pt 1): E380-91.
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