先日のブログでシトルリンとアルギニンという2つのアミノ酸について簡単に説明させて頂きました。
これらは運動パフォーマンスの向上、血流促進、美容効果、男性機能回復など多くの共通点があると考えられており、主に一酸化窒素(NO)産出に由来するものです。
この2つは分子構造も似ていて、オルニチン回路(尿酸サイクル)という同一の体内機構で働いている親戚のような間柄なのです。また同時摂取すると良いことが色々とあるかもしれません。
今回はシトルリンとアルギニンの関係性について紹介させて頂きます。
それでは見ていきましょう。
シトルリンとアルギニンはなぜ親戚なのか
図1:オルニチン回路の仕組み 出典https://oem.a2-pro.co.jp/suppliers/citrulline
上記図が尿素サイクルの概要です。主に肝臓の細胞及びミトコンドリアに存在してます。
この回路はアンモニア(毒)を尿素(無毒)に変換し代謝(無毒化)してくれます。なので肝臓が悪くなるとアンモニア分解能が低下して、ツンとした汗のにおいがします。
これがアンモニア臭です。
また回路途中(図の真ん中)で、アルギニンが一酸化窒素(NO)を生じたうえでシトルリンとなっています。これは酸化反応です。
まとめると、「アンモニアを無毒化して尿素に変換する際に一酸化窒素(NO)が産出され、その主な担い手がアルギニンとシトルリンである」ということになります。
これらがアルギニンとシトルリンを親戚と例えた理由です。ちなみに分子構造もそっくりなので気になる方はぜひご覧ください。
この後、この一酸化窒素(NO)が非常に重要なキーワードになってきます。
では見ていきましょう。
NO系サプリについて
上記のように一酸化窒素(NO)を産出すると言われているサプリはNO系サプリと言われています。
NO系サプリの効果が示唆されているものに関しては以下があります。(一部です)
主に一酸化窒素(NO)は平滑筋(内臓の筋肉のイメージ)に働きかけて血管を拡張させることにより効果を発現することが多いです。
一酸化窒素(NO)による血管拡張による効果
・血圧低下:血管負担軽減、血管保護
・パンプアップ:筋肥大
・血流改善:美容効果、むくみ、冷え性の改善、運動パフォーマンスの向上
もちろん乳酸やアンモニアの解毒、天然保湿因子(MMF)としての美容効果などもあります。こう見てみると一酸化窒素(NO)の恩恵はすごいですね。
実は、一酸化窒素(NO)はそれに関して研究した方がノーベル賞を受賞するほど奥が深い物質なのです。
シトルリンとアルギニンの関係性が重要である訳
それでは本題です。
結論からいうとシトルリンとアルギニンの併用は相乗効果があると示唆されています。
同時摂取の効果は?
ある研究ではアルギニン1.2g・シトルリン1.2g(1:1で計2..4g)を6日間投与後7日目にパフォーマンステストを行って比較したものがあります。
その結果、それらを単体摂取(2.4g)及び摂取しなかった群よりパフォーマンスが上がったというデータとなりました。つまりシトルリンとアルギニンを同時摂取すると単体摂取よりも良い結果がでるということが考えられます。
ちなみにテスト1時間前の摂取であり、これは摂取タイミングを考えるうえでも重要なポイントとなりそうですね。1)
また単独との比較はないのですが成長ホルモン濃度を上昇させるというデータも存在します。2)
それからラット実験であるもののNOはインスリン抵抗性改善の可能性も示唆されており3)、これらはインスリンと成長ホルモンの関係性を考えたうえで血糖値コントロールを安定させると考えられています。
このような相乗効果はシトルリン摂取により血中アルギニン濃度が上昇することと関係あると考えます。
同時摂取への疑念
ただここで、結局同じ回路で代謝されるのだから、片一方だけ摂取するので良いのでは?という意見も聞こえてくるのではないでしょうか。
この疑念を解決してくれる考えがいくつかあります。
アルギニンは強アルカリ性であり、酸性である胃に負担をかけます。つまりアルギニンのみで一定の効果を得ようとすると胃腸障害が問題となることがあるのです。対して中性であるシトルリンがこれを緩和してくれます。
またシトルリンはタイムリリース効果があるとされており、効果延長が期待できます。
シトルリンとアルギニンの同時摂取が示唆するもの
以上、簡単にまとめるとシトルリンとアルギニンを同時摂取することは単独摂取及びなにも摂取しない場合と比べて…
・各効果(上記参照)の増強
・成長ホルモンレベル増大
・アルギニンによる胃腸障害予防
・単独摂取より少量で、同程度の体感を得られる
・タイムリリース効果が狙える
以上の優位性を持つ可能性があると考えられます。
各成分の詳細は前述なので、過去の記事を参考にして頂けばと思います。
アミノ酸サプリ摂取の際には、アルギニン、シトルリン両成分を配合しているものがオススメです!
出典
1)Izumi Suzuki et al. A combination of oral l-citrulline and l-arginine improved 10-min full-power cycling test performance in male collegiate soccer players: a randomized crossover trial . European Journal of Applied Physiology . 2019, (119), p.1078-1084.
2)Zajac A. et al., J Strength Cond Res., 24(4): 1082-90., 2010
3)李 玲 et al. 一 酸 化 窒 素(NO)の イ ンス リ ン作 用 発 現 に果 た す役 割 . ジャーナル 糖尿病. 2000, 43, p.301-306.
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